30歳の春まで童貞だった僕は、思いきって、出会い系サイトでセフレを探すことにしました。「3日間雨に濡れっぱなしのパグ」と同僚に笑われる見た目の僕がこの先自力で童貞を卒業するのは無理に近いと悟ったのと、ネットの広告でたまたま出会い系サイトの広告が流れてきたのがきっかけでした。
 童貞を卒業するだけならフーゾクという選択肢もあったけど、お店に行くのは最初から逃げているような気がして、まずは出会い系サイトや割り切り専門掲示板で頑張ってみようと思いました。サイトとかなら、自分の力が試される余地も少しはあるから。
 「優良出会い系サイト」とネットで検索して、そのひとつに登録。登録記念として500ポイントを獲得。それだけじゃ絶対に足りないとわかっているから、追加で早速500ポイントを購入。1ポイントにつき10円。いきなり5000円の出費はちょっとイタイけど、かわいい女の子に出会えるんだったら、まあ安いほうかな。
 行動しなければ始まらないということで、とりあえず、エリアと年齢が近そうな女の子にメッセージを送信。プロフィール写真を見るかぎり、なかなかの美人。ピアノとクラシックが趣味らしい。音楽にくわしくなければ相手にされないのかと、ちょっとだけ不安になりました。映画だったら、少しはくわしいんだけどな。
 数日待っても、返信はなし。ほかの女の子からの自己紹介メールは、なぜかどんどん届くんですよね。ちょっと気持ちが舞い上がりかけたけど、「女性からくるのは基本的に全部サクラメール」というネット上のアドバイスを参考にして、彼女からの返信だけをひたすら待つことにしました。浮気性の男は嫌われると思ったから。
 待てど暮らせど彼女からの返信はなく、さすがに次の女性にメッセージを送ろうかと思った矢先、やっと一通のメッセージが届いたのです。
(返信遅れてすみません。海外に行っていて気づかなかったんです)
 これがどこまで本当かはわかりません。ただ、仮に嘘であっても良かった。時間を置いてもきちんと返信をくれる彼女に、やさしさと誠実さを感じることができたから。
 当たり障りのないメールのやりとりをしばらく続けた後、僕たちは会うことになりました。場所は、彼女の行きつけという喫茶店。
 間近で見る彼女はイメージの中よりもずっと美人で、そしてよく笑っていました。コーヒーを飲みながらお互いの趣味について語り合う時間はとても充実していて、セフレ探しというもともとの目的を忘れてしまうくらい楽しいものでした。
「……いいわよ」
 おかわりのコーヒーを飲み終わって会話も途切れがちになった頃、彼女がぽつりと言いました。
 僕も大人ですから、言葉の意味はわかっています。本来の目的なんてもうどうでもよくなっていたのですが、ここで逃げたら彼女に失礼だと思い、スマホで検索した近くのラブホテルに行くことにしました。
 そこから先は、皆さんの御想像におまかせします。ただひとつだけ言えるのは、(出会い系だって人をつなぐこともある)ということです。
 彼女と出会って3年が経ちますが、関係はまだ続いています。さすがにエッチにも慣れてきて、最近では少し大胆な体位も試せるようになりました。
 彼女も喜んでくれているようです。